お母さんは軽い肺炎を起こしていたが命に別状はないという。だけど体力が少ない今の状態で退院するのは良くないということで念のために入院することになった。

 そして救急車に運ばれた翌日。頼まれていた雑誌や着替えを持って病室に行くと、お母さんはベットの上で寝ていた。起こさないようにそっと扉をしめて中へ入る。

 肺炎は移るものらしいのでしばらくは個室で過ごす。それを聞いたときお母さんはまるでこの世の終わりみたいな顔をしていた。……よっぽど大部屋で誰かとおしゃべりがしたかったんだね。



「……ふふ、なあに? そんなに見つめられちゃ顔に穴が空きそうよ」



「グロいこと言わないでよ。……起こしちゃった?」



 “ごめんね”と苦笑いすると、お母さんは“いいの”と首を横に振る。



「学校は? 今日、平日でしょう」



「こんなときに学校なんて行ってられないよ。あたしは大丈夫だから、今は自分のことだけ考えて」



「玲那……」



 ずっと女手ひとつであたしを育ててくれた人。毎日あたしが起きる前に朝食を用意して仕事に出かけて、夜遅くに帰ってくる。ずっと働きづめでつらいばずなのに、笑顔は絶やさずいつもあたしのことばかり。

 ……お母さん、こんなに皺あったっけ。頬も少しこけて、随分やせ細ったね。