――――――あれ……そういえば“また”いない。
「桐…………やくんは……もう学校ですか?」
「えぇ、最近部活を始めたらしくて。剣道部の朝練なんですって」
「剣道部??」
あの桐也が?? …………似合わない。いや意外と……?
風を切って力強く振り下ろされる竹刀。
反動で額に張り付いた汗の粒がこぼれ落ち、光に反射してきらめく。
小さく揺れる裾。凛々しく整ったその横顔は真剣そのもので……――――――
「………………」
ま、まぁ……似合わないこともない…………かな。
「でも剣道部ってたしか……」
「あらあの子ったらお弁当忘れてるっ……!」
ハナさんの声に反射的に振り向くと、彼女はブルーのミニトートバッグを両手で持ちながら肩を落としていた。ブルーのミニバッグは桐也がランチバッグとして使っているもの。……あんな毒舌男でも忘れ物とかするんだ。
「桐也もバイトして小遣いを稼いでるわけだし、昼食くらい自分でなんとかするさ」
「そうだけど……あの子今朝も何も食べないで出ちゃったから、栄養が偏らないか心配だわ」
健也さんが優しく言うも、心配性なハナさんは表情を曇らせたままだ。