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「――――なにそれ面白い」



「どこがッ?!?!」



 翌日、学校の保健室で双葉ちゃんに昨日のことを話したらぷふふっと笑われた。睨みつけると“ごめんごめん”と肩を震わせながら言う。……笑いながら謝る人ってよくいるよね。



「で、その同級生はなんて名前でどんな子なわけ?」



「やだ絶対教えない」



「ええ? なんでよ、減るもんじゃないでしょ」



「からかわれそうだから言いたくない。というかあたしもまだ会ってないの」



「同じ家に住んでるのに?」



「昨日は遅くまでバイトが入ってたらしくて。待ってようと思ってたんだけど、あたし前の日徹夜して荷物の準備してたから、疲れて先に眠っちゃってたの」



「で、ぐっりすり寝て今朝は大遅刻」



 グサリ。双葉ちゃんの言葉の針が胸につきささる。あたしは心の中でぐぅ、と呻いたあとそのままソファに突っ伏した。



 ほんと居候のくせにハナさんに申し訳ない……!! ハナさんが部屋の外から声をかけてくれたとき、あわてて飛び起きてドアを開けたら“具合いが悪いのかと心配しちゃったわ。元気そうでよかった”って……あの微笑みは天使かと思ったよ。

 というか桐也も一人でさっさと学校行っちゃうし、起こしてくれればいいのに! まだ会ったことないけど、絶対性格ひねくれてて無愛想なやつだと思う。……あたしが人のことどうこう言えないけど。



「そういえばもうひとりお兄さんがいるらしいんだけど、高校に入ったと同時に家を出てるらしくて。その人もこの学校の生徒なんだって」



 “ちなみに三年生”。そう付け加えると、双葉ちゃんはなにやら楽しげな口調で“へえ、そうなの”と言う。ちらりと顔を盗み見ると、彼女はデスクワークをしながらニヤついていた。もうこの人が何考えてるか想像もしたくない。