2月の初旬。2007年に入って、もう一月が終わった。冬は本格化し、寒さも厳しくなってきた。

テレビでは、旅行番組をやっていて、大阪からすれば、あまり馴染みのない甲信越を回っていた。訪れた場所は山梨県の石和温泉や長野県の別所温泉、新潟県の直江津などだ。


直江津では、レポーター二人が海を見て少し興奮気味だった。「直江津港に来ました!荒々しい日本海ですね!」と女性レポーターが言うと

「ここ直江津では、春になると桜がきれいなスポットがあるんですよ!」と男性レポーターが切り出した。

テレビに昨年の桜の様子が写ると、突然さくらが、直江津行ってみたいな、と言った。


さくらは今まで、これといって特に何も要求してこなかったので、突然のことに八雲は驚いた。けれども、確かに、「日本三大夜桜」の一つらしいし、行ってみたくなってきた。

「行ってみようか?」と言うと、さくらは「うん!」と笑顔で答えた。


高田公園は直江津駅から2駅離れたところにある高田駅が最寄りで、駅からは、そこそこ離れている。

花の見頃と、行き方と運賃を調べる。
あと、宿泊するところも考えねば。

さくらにどういうところに泊まるか聞くと、センチュリーイカヤ、と答えた。

センチュリーイカヤ?

「あっ、旅館よりホテルがいい!」

「そうか。」

なんだったんだろう、と思って宿を調べると、ホテルの名前だった。

なんで知っているんだ?前に行ったのか?


八雲はさくらに聞きたかったが、やめた。もし、それが自分にとっても思い出の地だったらどうするのだろうか。さくらをより悲しませるのではないだろうか?