「えっ。いや、何言ってんの?」

「私を見ているときと常連客のみんなの顔を見たときの表情が違った。」

驚きのあまり、そのときから?と弱々しく言うことしかできなかった。


バレていた。自分がさくらを覚えていなかったことに。そして、一気に罪悪感が込み上げてきた。謝らずにはいられなかった。


「ごめんなさい。実は、さくらのことだけ全然記憶が戻ってなくて……」

「私だけ?」

「うん」

「私だけなの?」

「うん」


さくらは怒ることを忘れるくらい呆然としていた。こういう時、どういう言葉をかけていいのか解らなかった。


すると、さくらは急に、そっか!と笑った。「本当に私のこと全然覚えてないんだ。」

「ごめん」

「いいよ。忘れているんならそれでいい。」

「えっ?」

「なんでもない。」