しばらくすると、委員会が始まった。

顔合わせ程度だろう、って担任は言っていたけど、案外内容は濃厚だった。

自己紹介、年単位での活動内容、今年の体育祭に向けての準備内容、去年の体育祭の内容紹介と反省点等々……。

これから覚えていかなければいけないこともたくさんある。

委員会が終わると、あちこちから小声で「疲れた」「思ったより大変そう」等の声が聞こえてきた。


まあ、今日は無事に終わったことだし、早く帰ろう。

そう思いながら、シャーペンと消しゴムをペンケースにしまっていると。


「おい」

という声が聞こえて、自分のことを呼ばれた気がした。

というのも、その声が近田君のものだったから。

いや、私のことを嫌っている彼が自ら私に話し掛ける訳がないーーと思いながら、そろそろと顔を上げると、彼は私を見つめていた。


やっぱり私に話し掛けていた。


まさかのことに驚きを隠せなかったけど、向こうから声を掛けてきたんだから、少しくらい普通に会話しても問題ないよね?
今度こそ友達を作るチャンスだ……! と意気込み、精一杯の笑顔を彼に向ける。


「お、お疲れ様! 何か、色々やることありそうで大変だよね! あ、今日の内容は全部ノートに記録しておいたから、見たかったらいつでも言ってね!」

言い終わるのと同時に、私はA4サイズのピンクのノートを両手で胸の前で待ってみせる。

って、しまった。私、喋りすぎ? 向こうから声を掛けてきてくれたのに私が話を始めるなって感じ? ノートのくだりも恩着せがましかった?

なんて不安になっていると、近田君が私の手元からノートを取る。


「委員会中、何をそんなに書いてるのかと思ってた。内容全部記録してたのか」

少し驚いた表情で、彼はノートをパラパラとめくっていく。

やっぱり恩着せがましかったかな。

不安が大きくて、さりげなくノートを返してもらいつつ「近田君、何か用事があって私に話し掛けてくれたんだよね?」と本題に入ろうとする。


すると彼は。


「用事っていうか……この後、何か用事ある?」

「帰るだけだけど……」

「……ちょっと聞きたいことがある。途中まで一緒に帰ろうぜ」

え?


「……嫌ならいいけど」

「い、嫌ではないですっ!」


聞きたいことって何だろう?

でも私は、高校に入学して初めてクラスメイトと会話出来た喜びと、そのクラスメイトと一緒に下校という喜ばしい展開に突入出来たことを純粋に嬉しく感じていた。

友達になってくれるのかな……?