「それに俺、昨日の放課後に竹入さんと一緒に別のカラオケボックスにいました。その後、竹入さんの家の近くまで送り届けましたし」

「その後で、被害に遭った友人らと別のカラオケボックスで落ち合った、と本人は言っているが?」


近田君と校長のやり取りを、不安な気持ちでいっぱいになりながら聞いていく。

右手を胸の上にそっと置くと、ばくばくとうるさいくらいに動いていた。


「そうなのか?」

近田君が私の隣に立ち、そう尋ねてくる。

こくん、と首を縦に振る。
家まで送ってもらった後に、別のカラオケボックスに向かったのは本当だ。


ここで、近田君に本当のことを話すべきなのかしれない。
彼なら、分かってくれるかもしれない。


でも、分かってもらえなかったら?
彼に、信じてもらえなかったら?


もしそんなことになったらって考えると本当に怖くて、私はやっぱり何も言えなくなる。


それなのに彼は。



「そうだとしても、竹入さんが誰かを一方的に傷付けるなんて絶対に有り得ません」


校長に、真正面から堂々とそう伝えてくれた。


何で。どうしてそこまで信じてくれるの。

誰も私のことなんか信じてくれないと悲観的になっていたくせに、こんなに私のことを信じてくれていることに対してそんなことを思う。


だって、好きな人がこんな風に言ってくれてるんだよ。


さっきまで流れる気配すらなかった涙が目に浮かぶ。

世界が潤んで、滲んで、唇を噛み締めて必死に耐えていた、その時。