翌朝、学校へ登校すると、担任が校門の前に立っていて、私に声を掛けた。

カラオケボックスの店員が、警察には連絡しなかったものの、学校には連絡したらしい。制服を着ていたからどこの高校の生徒かはすぐに分かったのだと思う。


担任に連れて行かれたのは校長室だった。

大きなデスクチェアに腰掛ける校長は酷く不機嫌そうな顔で私を睨み付ける。
私は校長の正面に立つ様に指示された。



「うちの品行方正なイメージを壊すどころか、警察沙汰になってもおかしくないこんな事件を起こされるなんて……」


校長が頭を抱えながらぶつぶつと言葉を口にする。


違う。私じゃない。

心の中では勿論そう思うけど、


「これだから、こんなガラの悪い不良が入学してくること自体、嫌だったんだ!」


ここでもやっぱり、私の言葉は聞き入れてもらえそうにない。


否定の言葉を紡ぐのが辛い。だってどうせ信じてもらえないから。

辛いから、何も言えない。



「担任の君がこんな不良生徒を野放しにしておくから!」

「し、しかし校長。竹入は成績は非常に優秀な生徒でして」

「頭だけ良くても素行が悪いんじゃどうしようもない! 頭が良い生徒なんてうちには他にもたくさんいるんだ!」


そうか。私ってきっと、いてもいなくてもどっちでもいい存在なんだ。

そうだよね。周りに流されて、従ってばかりの〝中身〟のないこんな自分。存在の意味なんてない。


涙すら出てこない。いっそ出てくれればいい。その方が気持ちのやり場がきっとある。



そして。


「今後、君のご両親を呼んで話をすることがあるかもしれないが、私としては君の退学を考えている」


退、学?


「ま、待ってください……」

そこでようやく、言葉が出た。


自分のことを誤解されるだけなら、もういっそ仕方ないって諦めようと思っていた。

でも、退学って。


そうなってしまったら、杏ちゃんや菜々ちゃん、基紀くんに堀君、そして……


近田君に、会えなくなる。