私の目の前で、彼女の真っ赤な血が飛んだ。

ぽたぽたと床に血が滴り、溢れたオレンジジュースと混じる。


すると。




「きゃぁぁっ! 誰か助けてーっ‼︎」


響き渡る大きな声で、莉菜が叫んだ。


何? どういうこと?


すると、その声を聞いた店員達が数人、私達の元へとやって来る。他のお客さん達も部屋から顔だけ出してこっちの様子を伺う。

莉菜は、さっき受付にいた店員に抱き着いた。


「助けて! この子が突然襲い掛かってきて…!」


……え?


「痛い、腕が痛い! 血が止まらない!」


何、言ってるの。その怪我は今、自分で……。


他の店員二人が、私のことをまるで取り押さえるかの様に、腕を掴む。


「奥の管理室連れて行け!」

「暴れない様にしっかり捕まえろ!」

ちょ、ちょっと待ってよ。

これじゃあ私が悪者じゃない。

違う、私がやったんじゃない。


「やめてっ、離してください!」

掴まれている腕を何とか振り払おうとするけど、力が強くてそれは叶わない。


「私じゃないですっ。莉菜が突然、自分でっ」

本当のことを伝えようと、私は必死に口を開く。

伝わるはず。真剣に話せば、私が莉菜を傷付けていないことが。


信じてもらえるはず。


そう、思ったのに。



「嘘を言うな! これだから不良は!」

「昔からよく来てたから贔屓してやってたのにこんな事件起こしやがって!」


な……何でそうなるの?


何で、信じてくれないの?