「春日がいなくなったら、うちらの遊び道具がなくなってつまらなくなるじゃーん。もっと一緒にいようよー」

アソビドウグ。
私は莉菜達にとっての友達じゃないことは明白だったけど、そもそも人間扱いすら……されてなかった。


でも、ただ怯える為にここへ来たんじゃない。


「わ、私はもう二人とは会わないっ。い、言ったでしょ。私のことを友達と思ってくれる人と一緒にいるって決めた、の」

声がさっきよりも震えてる。情けないしかっこ悪い。でも言いたいことはちゃんと言えた。


そこで初めて、莉菜の顔から笑顔が消えた。


「マジウゼェよ、お前」

さっきまでの、いつもみたいな高めの声じゃなかった。


「友達? 何それ。誰かがあんたと友達になってくれるって言うの?」

莉菜がもう一歩、私に近寄る。
触れ合ってしまいそうな近距離で、彼女が私を見つめる。


「友達ってさ、何があっても信じ合える関係のことでしょ? あんたのことなんか誰も信じないよ」

「そんなこと、ないよ……」

「じゃあ、試してみようか?」


え? と私が聞き返すのとほぼ同時にーー莉菜は持っていたグラスから手をぱっと離した。


ガシャーン! という大きな音と共に、グラスが床で粉々になり、中に入っていたジュースが派手に飛び散る。


そして莉菜はゆっくりとその場にしゃがみ込み、グラスの破片を一つ手に取る。

そして。


にやっと笑ったかと思うと、制服の半袖シャツの下に伸びる白くて細い左腕にそれをあてがい。


ザクッ……と、腕を切った。