「まさか春日にそんな風に思われてたなんてショックだなーぁ」

私から手を離して、とてもわざとらしくそう言った。

個室のドアが開けっ放しで、私の背後が廊下であることに少し安心感を覚える。
それなりに人で賑わっているし、ここで乱暴されることはないはずだ……そう思って、必死に平気な振りをする。
本当は、怖くて怖くて今にでも倒れてしまいそうだ。


「中学の時から、ずーっとうちらに怯えてたんだ?」


その言葉に、私はゆっくりと、素直に首を縦に振った。
でも。


「でも……それだけじゃない」

私が発した震える声が、莉菜の眉をぴく、と動かした。どういう意味だ、と言われてるのだと思った。


「莉菜も泉も怖かった。怯えてたよ。でもそれだけじゃない。
感謝、してたよ」


そう、だって。

友達のいなくなった私に声を掛けてくれたのが二人だった。

いじめに遭った私を助けてくれたのが二人だった。

いつからか私達の関係はこんな風になってしまったけど、助けてもらったあの時、私は本当に嬉しかったし救われた。


「あの時は助けてくれて本当にありがとう。
二人と一緒に過ごす様になった最初の頃は、私は二人の友達になりたかったし、友達だと思ってた。
でも、違ったから。
私達の関係はもう友達じゃないよね。
私……これからは、私のことを友達だって言ってくれる人達と一緒に過ごしたいのっ」

言えた。今日二人に絶対に伝えたかったこと。言えた。

手足はまだ震えてるけど、少し安心した。


莉菜達は……特に莉菜はどう思っただろう。

正面に捉える莉菜の顔は、少し俯いていて、彼女の肩までの明るい茶髪に隠れていてよく見えない。


「莉菜……?」


何も反応のない彼女に、私から声を掛ける。
すると。


「ふふふ……っ、あははっ‼︎」

急に笑い出した莉菜に、私の全身がぞわ、っと寒気を覚える。

何……? 何がそんなにおかしいの?