「基紀君、女子にモテたい願望のある人だったんだね」

「まあ実際モテたけどな。イケメンだし、トーク上手だし」

私にとっては近田君の方がかっこいいよ、とは恥ずかしくて言えなかった。


「杏ちゃんも同中だよね?」

「ああ。伊川は俺と同じクラスだった。
だから基紀がよくうちのクラスに来たりしてたな」

基紀がバスケ部を辞めた後もなんやかんやで話すことが多かったのはそのお陰かも、と彼は続けた。


「……そう言えば前に、杏ちゃん、中学の時に友達あんまりいなかったって言ってたよね?」

「ああ。まあ正直……いじめっつーかさ。水ぶっかけられたり、上履き盗まれたり、そういうこともあったみたいなんだよ」

「え?」

「まあ本人がああいう性格だから、真正面から言い返したりやり返したりしててさ。だからそういう陰湿ないじめはすぐに沈静化したんだけど……友達は、殆どいなかっただろうな」

基紀君がモテる人だったから、彼のことが好きな女の子達から疎まれてた、って前に言ってたよね。そこまで酷いいじめだったんだ……。

私も中学生の時に似た様ないじめを味わったから、杏ちゃんの気持ちはきっと理解出来る。
でも私と違って真正面からぶつかっていった杏ちゃんは本当に凄い。


「……皆のこと。まだまだ知らないことが多いなぁ」

知っている様で、何も知らない。知り合ってまだ間もないから当然と言えば当然なのかもしれないけど。


「……もっと知りたいな」


皆のこと。そして、近田君のことを……。


すると近田君は。