「ていうか、さっきから〝皆〟って言ってるけど、たった四人だからな。クラスの大半はお前のこと未だに〝頭の良い不良ギャル〟だと思ってるからな」

「は、はい」

頭の良い不良ギャル……そんな斬新なジャンルは開拓したくないなぁ。


「それに、基紀だってお前には初対面でガンガン話し掛けてただろ?」

「それ、前に菜々ちゃんにも言われたけど……基紀君はからかい方がちょっと失礼なんだよね。別にいいけど」

「……じゃあ好きにはならない?」


……へ?


「な、何て? へ?」

つい動揺して、またしても声が裏返ってしまう。
だって近田君からそんなこと言われるなんて思いもしなかった。彼の口から恋バナの類を聞いたことすらなかったのに。

冗談? 意味なんてない発言?

でも。


「……何でもねぇ。今の忘れて」

右手で口元を抑えながら目を逸らす。
薄暗くて顔色まで分からないけど、もしかして……耳まで赤い?


だけど〝今のどういう意味?〟と聞くことは出来なかった。


「……基紀君と言えば、二人は中学の時からの友達なんだよね?」

さっきまでみたいな気まずい空気を流したくなくて、なるべく自然な感じで話を振る。


「ああ、そうだよ。クラスは違ったけどな。一ヶ月だけ部活が一緒だった」

「一ヶ月だけ?」

「あいつ、女子にモテたくてバスケ部に入学したらしいんだけど、練習のハードさについていけなくて一ヶ月で辞めたんだよ」

そう言って近田君は笑った。
彼の笑顔が見られて嬉しいのと同時に、基紀くんがちょっとかっこ悪いこの話題は菜々ちゃんには話さない様にしようと決めた。