「……この間も言ったけど、何だその頭」

「え?」

金髪のことだよね? 確かに、この間も言われた。
でもこのタイミングでそれを言われる理由が分からなくて、私は思わず首を傾げた。


すると彼は私を睨む様に見つめながら、更に続ける。


「スカート短すぎ。
アクセサリージャラジャラさせすぎ。
あと、爪の殺傷能力値高すぎ」


さ、殺傷能力値⁉︎
この付け爪が気に入らないということだろうか……。確かに普通の爪よりは引っかかったりしたら痛いかもしれないけど……。


それにしても殺傷能力値って。
もしかして、ギャグ? 教室の場所が分からなくて不安になってる私を笑わせようとしてくれてるのかな?


「あは……」

「何笑ってんだ」


低い声で食い気味にそう言われ、彼が冗談一つ言っていないことを思い知る。


そして。


「俺、不良とか派手な奴とか嫌いなんだよ。同類だと思われたくねえから、隣歩くな」

そう言うと、私の返事を待つことなく、彼は再び前を向いて歩き出す。


隣、歩くなって……。

それって……。


「ま、待って!」

近田君をもう一度呼び止めると、彼はまた足を止めて、だけどさっきよりも不機嫌そうな顔で振り向く。


「何だよ、何か言い返すことでもーー」

「隣を歩くなってことは、後ろからついていくのは良いって意味だよね⁉︎ うわあー助かるよー! ありがとう!」

近田君って厳しくて怖い人なのかなって思ったけど、全然優しいじゃん! やっぱ隣の席で良かったー!


……でも、近田君は何故かぽかんとした顔をしたまま動かず、私のことを見つめる。


「近田君?」

「……はあ。好きにすれば」

「あっ、うん!」

すたすたと歩いていく彼の背中についていきながら委員会の教室に向かう。
彼の姿を見失わない様に。でも、なるべく距離をあけて、彼が私と友達だと思われない様に気を付けた。