ホームルームが終わって休み時間に入ると早速、ハイキングの班決めの話題でもちきりとなる。
そんな会話をしてくれる人はいない私だけは、いつも通り自分の席でぽつんとしていた。
すると、隣の席から聞こえる会話が耳に入る。
「総介! 同じ班になろうぜ!」
近田君にそう言ったのは、確か入学式の日に彼に〝同じクラスだな〟と声を掛けていた男の子だった。
「おう、基紀(もとき)。よろしくな」
近田君に基紀と呼ばれたその彼は、黒髪のサラサラヘアーで、目も眉も切れ長で、まつ毛も長い。
近田君と同じ位に背が高いけど、体格の良い近田君とは違い、スレンダーな感じ。
近田君とは違ったタイプのイケメンだ。
そんな基紀君? の隣にはもう一人男の子がいた。
スポーツ刈りで、体格は良いけど大人しそうな顔をしている男の子。
彼を紹介する様に基紀君が話し始める。
「総介。こいつは俺の隣の席の堀 優人(ほり ゆうと)。この三人で同じ班ってことでいいよな?
ちなみに優人もバスケ部に入るらしいから、総介と一緒だな!」
「堀です。よろしく。宮川中のバスケ部のキャプテンだった近田君だよね? 俺、夏の地区大の三回戦で当たったんだけど覚えてる?」
「あっ、境中のフォワードだった堀だ! 覚えてる覚えてる! 良い試合だったよな!
高校ではチームメイトになるんだな!
あ、俺のことは名前で呼んでよ」
おぉ。初対面の二人が一瞬にして打ち解けた。
いいなぁ男の子は爽やかで。
……いや、私が男子だったとしてもクラスで浮いている現実は変わらなかっただろうけど。
「おい。おいったら」
それにしても、誰が私と同じ班になってくれるのだろう。
いや、なってくれるというか……させてしまうというか……。
「聞こえてねえのか。竹入」
へっ?
今、名前呼ばれた?
「なっ、何⁉︎」
バッと振り返ると、近田君がこっちを見ていた。
「朝からボーッとしてんじゃねえよ。
誰と一緒の班になるか決めたのかって話だよ」
近田君は眉間に皺を寄せて、呆れ顔でこちらを見ている。
男友達と会話してる最中にまさか話し掛けられると思わなかった驚きと、もしかして私が一人でぽつんとしていたから声を掛けてくれたのかな、なんて自惚れで、思わずドキドキと動揺してしまう。
「い、いやその、私は友達いないので……っ!」
裏返った声でつい、そんな情けない返事をしてしまうと。
プッ
と、誰かに笑われる。
それは、近田君の隣にいた基紀君だった。
「はーはっはっ! 駄目だ、耐え切れん! その風貌で友達いないので、だって! おもしろ!」
そう言って彼は、しばらく笑い続ける。
笑わせる様なことを言ったつもりはなかったし、何となく馬鹿にされてるのが分かったので、私は恥ずかしさで何も言えなくなる。
すると近田君が「おい、基紀。笑いすぎだぞ」と注意してくれる。
そこでようやく基紀君は笑うのを耐え、だけど未だに肩を揺らしながら「ごめんごめん」と言ってくる。