転校してきてから三ヶ月が経った頃だった。

何の前触れもなかった。

朝、いつもの様に教室へ登校すると、私の机の上が酷いことになっていた。

水浸し、落書き、教科書は破かれ、虫の死骸まで散らかっていた。


何が起こっているのかすぐに理解出来ずに机の前で立ち尽くす私の耳には、「かわいそう」「片付けるの手伝った方が良くない?」「でも、誰があの嫌がらせさのか分からないから」「竹入さんの味方して、自分達もターゲットにされたくないよね」という声が聞こえてきた。


それでも、私がギリギリのところで涙を流さずにいられたのは、朔ちゃんの存在だった。

朔ちゃんが来てくれれば、私はきっと安心出来る。
きっと味方になってくれる。


すると、朔ちゃんが登校してきた。

朔ちゃんも、すぐにこの状況を理解した様だった。


「朔ちゃん、あの……」

私は朔ちゃんに駆け寄り、声を掛けた。
大丈夫だよって言ってもらいたかった。


でも、朔ちゃんは私を無視して自分の席に着いた。


朔ちゃんは困った様な顔をしていた。
その顔を見て、朔ちゃんがこの状況を作り出した訳じゃないのは分かった。

だけど、助けてはくれなかった。

朔ちゃんも周りの皆と同じ様に〝自分もターゲットにされたくない〟と思ったんだろう。


朔ちゃんを責めるつもりなんてない。

だけど悲しかった。

友達だと思っていたのは私だけだったの?


私は教室を飛び出し、トイレで泣きじゃくった。