「……え?」

何? 訳が分からなすぎて、思わず笑ってしまった。

……彼が、くだらない冗談を言う人ではないということは、分かっているのに。


【……遠距離になるしさ。ばあちゃんを一人にする訳にはいかないから気軽に遊びに行くことも出来ないし】

「だ、大丈夫だよ。会うのが半年に一回でも、一年に一回になっちゃっても、たまに電話とか出来ればさ……」

【……友達とかならそれでもいいと思うけどさ。付き合ってても、側にいてあげられないからお前に悪い】


悪くなんかないよ。私のことを想ってくれているなら別れるなんて言わないでほしい。


そう思うのに何も言えないでいるのは、きっと、私が何を言ったところで彼が自分の気持ちを曲げないだろうって感じているから……。
だって彼は、すぐに意見を変えるような中途半端な人じゃないから。



【……あ。友達やめようって言ってる訳じゃないぜ。連絡はするし、会える時は会いたいって思うし、何より、お前の悩みはずっと共有していきたい】

「総、介く……」

【髪】

「え?」

【いつか黒髪に戻せるように、俺は出来る限りお前のこと支えていくよ】

だけど側にはいてやれないから、と彼は言う。

嫌だ、嫌だ。側にいてくれなくていいから。私は総介くんの特別でいたいんだよ。


……だけどそれって、私のワガママなのかな。
私、総介くんにとって重い存在?
別れようって言われたら素直に別れた方がいいの?

……分かんないよ。

こんなに誰かを好きになったの、初めてだもの。