【ごめんな。ちゃんと自分の口から説明しなきゃいけなかったんだけど、バタバタしててさ】

「バタバタって? 一体何があったの? どうして転校なんて……」

【あれ? もうホームルーム終わってるだろ? 担任、何も言ってなかった?】

「言ってた気はするけど、驚いちゃって全然聞こえてこなかった」

【はは、何だよそれ】

小さく聞こえた彼の笑い声にやっぱりどこかほっとするも、携帯越しなんかじゃなく、ちゃんと直接会って、直接聞きたいと思ってしまった。


そして、彼は転校の理由を話してくれる。


【ばあちゃんが倒れたんだよ】

「え?」

【手術や入院が必要になるんだけど、地元の病院じゃ症例がない関係で受け入れてもらえないんだ。だから、東京の病院にばあちゃんをお願いしないといけなくて】

他に身寄りがないから俺が側にいないと、と彼は言った。

そうだったんだ……。
おばあちゃん大丈夫? と聞くと、「……今はとりあえず」と、かなり弱々しい声で返ってきた。

あの日、初対面で金髪で派手な私に、優しく浴衣を着付けてくれた、総介くんの優しいおばあちゃん。
倒れたって聞いたら、私も心配だ。
それなら、転校も仕方ないかもしれない……。


「ねえ、私に出来ることあったら何でも言ってね」


なるべく明るい声でそう言った。私がワガママを言うことで、ただでさえ大変な思いをしている彼をこれ以上困らせたくない。


遠距離恋愛だっていい。彼のことが好きだからそんなことくらいは耐えられる。


その代わり、電話やメッセージはいっぱいし合おうね、なんて言おうかと思ったその時……。


【……春日】

「何?」

【……






別れよう】