しつこい女だと思われたっていい。簡単に身を引きたくない。


彼は自販機から離れ、姿勢を正すと「ちょっと落ち着いて」と私に言う。


「いや、まず。俺、金髪が好きとかじゃないから。寧ろ春日の金髪も、こんなに派手な格好しやがってコイツはアホかって目で見てるから」

「じゃあ性格? 成績? 春ちゃんに近付ける様に、私頑張る。だから……」

「待って、待って」

基紀君が両手の平を突き出して、私の言葉を制する。


そして。


「……まあ、春日はさ。何か、からかってて面白いんだよ。天然だし。でも、松岡さんが春日に劣ってるとか一ミリも思ってないし、寧ろ松岡さんの方が一般的に女子として魅力的だと思うし、春日みたいになるとか言うなって」


この言葉は、彼の優しさなのだろう。


だけど、私には残酷に聞こえる。



「どんなに頑張っても、基紀君は私のことは好きにならないってこと?」


涙は我慢しようとしていたのに、駄目だ。視界が滲んできた……。


恋って、失恋って、こんなに苦しいものなんだ……。



「わわっ、泣かないで」

基紀君がわたわたしながら困っている。好きな人にこんな顔させたい訳じゃなかったんだけどな……。


すると彼が。


「……ていうか」

「え?」

「……俺なんかにそんなに必死になってくれて……何つーか、落とされた」

そう言いながら、彼はその場にしゃがみ込んで俯く。

落とされたってどういうこと? と、私もその場に腰をおろし、彼に尋ねると。