分かっていた答えだったから、思ったよりショックはなかった。

……春ちゃんが好きなのは近田君だって分かっているからかもしれないけど……。


「ってか、松岡さんはどう考えても俺みたいなの好きになっちゃ駄目でしょー。もっと優等生を好きになりなさいよ?」

「ふふ。そうだよね」

「あ、ちょっとくらい否定してよ〜」

基紀君も、春ちゃんが今頃近田君とどんな会話をしているか、きっと何となく分かっているだろう。

失恋したばかりの二人が、作り笑いしながら会話してる。変な空気だ。


だけど。


ただフラれるつもりで彼を呼び出した訳じゃない。


初恋だから。


簡単に諦めたくない。



「基紀君、春ちゃんのどんなところが好きなの?」

「えー? どこだろなぁ」

自動販売機に気だるそうにもたれかかりながら、彼は視線を彷徨わせる。


「たとえば? 見た目が好きなの?」

「見た目? うーん、そりゃ可愛いとは思うけど……」

「じゃあ、私も春ちゃんみたいな見た目になれる様に努力するから」

基紀君が、切れ長の目を大きく見開いて、ぱちぱちと何度も瞬きしながら私を見る。


私は、耳の後ろで一つに束ねた自分の黒髪を指で掴み、


「基紀君が金髪が好きなら、私も金に染めるよ。ピアスも開ける。アクセサリーもいっぱい買う。スカートも短くする」

「松岡さん?」

「私は、基紀君と付き合いたい」