学校を出ると、当たり前だけど私と近田君以外にも下校途中の生徒はたくさんいて。

近田君はさっきみたいに〝隣歩くな〟とは言わなかったから、今は彼の右隣を、なるべく彼の歩幅に合わせて歩く。


会話は、特に盛り上がることもなかった。

だけど、近田君は中学時代にバスケ部でキャプテンをやっていたこと、高校でも当然バスケ部に入部すること、電車通学をしていること等、少しだけど彼のことを知ることが出来た。

どれも本当に些細な情報だと思うけど、それらを知れたことが何だかとても嬉しく感じた。

ていうか、バスケ部のキャプテンかぁ。そんな感じ。体格良いし、真面目そうだし、思ったことはっきり言うし、正統派のスポーツマンタイプだもんね。


私のことはあまり話さなかったけど、どうやら彼は、座席表で私の名前を見て〝たけいり かすが〟だと思っていたらしい。
〝かすが〟じゃなくて〝はるひ〟だよ、と教えたら、少しだけ気まずそうに「悪い」と謝られた。

謝らなくてもいいのに。でもきっと、近田君って実は本当に良い人なんだろうな。