「なるちゃんさぁ、意外と乙女だよねー」



「は、い?」



「少女漫画の王子さま好きなタイプだろ?」



「失礼ね。

わたしは報われない方を好きになるタイプよ」



……いや、俺が言いたかったのそこじゃねえし。

なんて思いながらもイタズラ心が勝ってしまって、なるみに近づけば動揺したように俺を見る瞳。



「『あいつじゃなくて、

俺のこと好きになればいいのに』」



「……っ!」




耳にくちびるを寄せて、なるみにだけ聞こえるよう甘い声を流し込んだら、一瞬にして真っ赤になる顔。

……ったく。すげえかわいい。



「な、なっ、なに言ってんの!?

っていうか何がしたいの!? セクハラ!!」



「落ち着けよ。

当て馬っぽいセリフ言ってみただけじゃん」



「……っ、うるさいばか!」



……まあ半分は、俺の本音。

なるみが兄貴のこと好きだって思い込んでたから、俺を好きなればいいのにって思った回数は数知れず。



「……あ、もしかしてセリフじゃなくて。

壁ドンみたいに行動で示して欲しかった?」



「もう黙って……

あと壁ドンは定番だけど既にちょっと古い……」