「っ、みんな謝ってくれたから……
だから衣沙の悪口、そのあと減っていったでしょ……?」
「いや、そのあたりからもう気にしてなかったし」
「わたしがそのあと女の子たちと急に仲良くなったのも、ちゃんと仲直りしたからなの……
別に衣沙のこと一緒に悪く言ってたわけじゃない……」
ぎゅっと不安そうに俺の手を握るなるみ。
潤んでいく瞳を見て、そうだったのかと今さら納得した。
「ご、めん……
衣沙がそのあとのこと知らないなんて思わなくて」
「……、」
なら。
俺が数年抱えてきたこれは一体……?
「なんとも思ってないって言ったじゃん……」
「衣沙のこと好きに決まってるでしょ……?
っていうか好きじゃなかったらそもそも同じ高校行くなんて言い出さないから……!」
「……じゃあさ」
人目を気にして、すこしだけ足を進める。
それから人の少ない道で足を止めると、不安定に瞳を揺らすなるみを見下ろす。滑らかな頬に指を滑らせれば、鼓動は馬鹿みたいに速くなる。
……傷ついても、あきらめられなかったもの。
強引に奪いたかったのに、奪えなかったもの。
「……俺もう我慢しないから」
なるみのシャツのボタンに指先をかければ、なるみは目を見張った。
3つ目を外したところで我に返って胸元をおさえたなるみの肌に残る赤い痕。……ムカつく。