エリィは適当な上着を羽織り、財布とカギをポケットに入れて、素足のままスニーカーを履いた。

「お待たせ。」

「別にいいのに…。」

「いいの。ほら、行こう。」

「…お、おう。」

俺とエリィは駅までの道を並びながら歩いた。

特に何を話すわけでもなく、歩いて10分弱の短い道のりを歩く。

駅につき、電車の時間を確認する。

どうやらあと7、8分あるようだ。

俺はタバコを吸うため喫煙スペースに向かった。

エリィは一歩後ろをついてくる。

その間も会話はない。

喫煙スペースにつき、タバコに火を付けるとエリィが口を開いた。

「私…このままマッシュの家いっちゃダメかな…?」

俺は思わずくわえたタバコを落としそうになるほどびっくりした。

「な、何言ってんの?」

思わず、こんな心ない言葉を返してしまった。

「だよね~、びっくりさせちゃったみたいでごめん。」

エリィは笑顔でそう言ったが、どこか寂しそうに見えた。

「…エリィ…明日…来るか?家…。」

俺は逆に聞いてみた。

「…やめとく。なにされるかわからないし~!」

エリィは笑いながらおどけてみせた。

「そっか…、じゃあそのうちな。」

「うん。」

「もうぼちぼち時間だな、行くわ。」

俺はタバコを灰皿に捨て、改札をくぐろうとした。すると…

「…マッシュ!」

エリィが俺の腕を強く掴んだ。

「…ん?」

俺は足を止め、少しだけ振り返りエリィの顔を見た。

エリィは下を向いたまま

「一本だけ…電車遅らせてくれないかな…?」

エリィは今にも泣きそうな小さな声でそう言った。

「…わかった。」

俺も小さく答えた。

それから次の電車が来るまで、俺とエリィは改札の端の壁に寄りかかり、たわいない話をした。

そして次の電車で、俺は家路についた。

俺は帰りの電車の中、エリィの甘えに戸惑い、まともな返しもできず、一緒にいてやることもできなかった自分は最低のチキン野郎だと…自分を責めていた。

そこには、シャークさんと…元カノの影がチラついていた…。