俺は黙ってエリィの話に耳を傾けた。

「雑誌に出た途端に別れようって…バレなきゃ続けるつもりだったって事だよね…。こんなあからさまな別れ方すると思わなかったよ…別れるなら私から…そう思ってた…。」

エリィは淡々と話す。
自分が思っていたこと、シャークさんに対する気持ち…。
エリィは強い女性だと俺は思った。



ひとしきり話したエリィは黙って冷蔵庫から何かを取り出した。

「…これ、ありがとう…。」

エリィが冷蔵庫から出したのは俺がドアノブにかけて帰ったエクレアだった。

「これがなかったら私今ごろ誰にも言わずにどこかに行ってたかもしれない…。」

「大げさな事言ってんじゃねえよ。」

俺はエリィの顔を直視出来ず、ただ斜め下を見ながら返した。

「…マッシュみたいな人が彼氏だったら…幸せになれるんだろうな…。」

エリィはエクレアを食べながら俺の肩により掛かった。

「…。」

俺はエリィのこの言動に戸惑い、固まってしまった。

自分の気持ちもはっきりしてないのに、予想外の言葉を冷静に捉えることもできず、どうしていいものかわからなくなった。

しばらく沈黙の間が空いた。

俺はエリィに思い切って切り出してみた。

「…例えばさぁ、俺が付き合ってくれって言ったら…付き合う?」

こうやって下手なオブラートに包むのが俺の限界だった。

エリィは俺の肩により掛かったまま、

「…付き合う…かも。」

と、少し顔を伏せて言った。

「…まぁ、例えばだからね!」

俺は慌てて例えであることを強調した。

「エリィには、絶対一番に思って大切にしてくれる人がいるよ。しかもイケメンで!」

俺はテンションを少し明るくして言った。

「そうなのかな…イケメンじゃなくてもいいんだけどな…。」

エリィはうっすらと笑いながら答えた。

「…よし、俺は帰る。少し元気になったみたいだしな。」

と、俺は玄関の方に向かうとエリィが

「ちょっと待って。」

と外に出る支度をし始めた。

「送ってく!」

「いいよ、道わかるし。」

「いいからちょっと待ってて!」

俺は言われるがまま、玄関で待った。