練習場所に戻り練習を再開するも、記事のこととエリィの事で全く踊りに身が入らない。

気分転換にとタバコに火をつけたがそれでも気分は晴れない。

俺が心ここにあらずな事を察知したのか、ユリが声をかけてきた。

「どうしたの?元気ないじゃん。」

「いや、眠いだけ。」

俺は嘘をついた。しかしユリはそれを見透かしたように、

「ホントに?…エリィのこと、心配なんじゃないの?」

と言ってきた。

俺は何も言い返す事が出来ず、ただうつむいた。

「もう始発も出てるし、今日は帰ったら?とりあえず寝ないと体もたないよ?」

ユリは気を使って帰る事を勧めてきた。

確かにあれからまともに寝ていない俺は少しテンションの起伏が激しくなっていた。だが、そのことは自分自身は無自覚で睡魔もそこまでは襲ってきていなかった。

「いや…大丈夫だよ。」

俺はタバコを消し、練習を再開した。

それからも練習には身が入らないまま、日が昇り朝を迎えた。



みんなと別れ、いつものようにホームで電車を待つ。

いつもなら隣でエリィがブログをアップしている…しかし今日は1人だ。

そのことに少し寂しい感じを覚えながら到着した電車に乗り、帰路に着く…。



俺は無意識のうちにエリィの最寄り駅で電車を降りた。

何かできるわけでも声をかけてやれるわけでもないが、ただエリィの事が心配だった。

そして何もできない事はわかっていながら、エリィの家に向けて歩きだした。

そうだ、エクレアを買っていってやろう。
俺はコンビニにより、エクレアを1つ買った。

エリィの住むアパートにつき、エリィの部屋のドアの前までやってきた。しかし、俺はそこから動くことが出来なくなった。

何の連絡もせず朝方にここまで来ておきながら、ノープランで特に何もしてやれないし、何をしてやればいいのかもわからない。

俺はしばらく立ちすくんだ後、チャイムを鳴らすこともドアノブに手をかけることもなく、買ったエクレアをそっとドアノブにかけてその場を立ち去った。