「俺らちょっとケーキ買ってくるから、スピーカーの電池とか買いに行ったことにしといてくんね?」

俺はシュートに言った。

「わかった。適当にごまかしとくわ!」

シュートもノッてくれた。



ケーキ屋に向かう途中でミラーが持ち金を確認して言った。

「ヤバい…俺500円しかねぇ…」

俺も財布の中身を確認してみる。

「俺…1200円。まぁなんとかなるでしょ。」



ダンサーとは基本的にお金がない。
イベント出演にしても、コンテストに出るにしても金がかかる。
売れなかった場合のチケットノルマ、
交通費、
クラブ内での酒代…etc

生活費はある程度稼げるようになるまでは切り詰めざるおえないが、それでもダンスはやめられない。

楽しいから。



話が脱線してしまったのでユリのケーキの話に戻そう。

ケーキ屋に着いた俺らは閉店ギリギリの店内で一際異彩を放っていた。

店内にいる客は静かにケーキを選ぶOLや子供連れの主婦しかいなかった。

そんな中に練習着でTシャツにスウェットの見窄らしい男2人…

明らかに場違いだ…汗

しかし、そんな事は俺らにはお構いなし。
ケーキのディスプレイを見ながらとりあえず安くて美味そうなものを、ベラベラ喋りながら選ぶ。

かなり迷惑な客だ、俺達…汗

「これよくね?」

「いや、それならこっちでよくね?50円安いし。」

「え~そこは50円にこだわっちゃダメっしょ?」

「手持ちがねぇんだって。」

「じゃあ貸しにしといてやるから金入ったらコーヒーな。」

「O~K~。」

50円程度でこんなやり取りになることもしばしば。

そして結局普通のショートケーキを1つ購入し、練習場所へ戻った。