「マッシュ…迷惑かけてごめんね…。」

「なんだ、起きてたんか。いいよ、気にすんな。」

「ありがとう…。なるは…?」

「仕事だって。大丈夫だよ、ちゃんと任されてっから。」

「そう…、ちょっと肩借りていい?」

エリィは俺の返事を待たずに肩にこめかみを当てて寝てしまった。
端から見たら完全にカップルのように見えるだろう。

エリィが抱えてる悩みは何なのか…大まかにはわかる。

エリィはおそらくすごく好きでしかたがないんだろう。
しかし、噂やあの軽い扱いが引っかかって、不安で、どうしていいかわからなくなってるんだろう。

俺は半年前、元カノの事で悩み、自分を失いかけエリィに何度となく助けられた。

俺は少しでもエリィの支えになってやりたい…電車に揺られながら俺はそんな事を考えていた。



エリィの最寄り駅が近づき、足元に置いた荷物を持ち上げエリィを起こす。

「エリィ、駅着くよ。」

エリィはぐっすりと寝ていてまったく起きる気配がない。

俺は肩に寄りかかるエリィの体を揺す。

「ん…んん…。」

「エリィ、駅着くよ。自分で歩ける?」

「ん~…うん…。」

エリィはいつもみんなの面倒を見たりしてる姉貴分な一面とはまるで正反対の子供のような甘えた声で答えた。

「何甘えてんだ。ほら、降りるぞ。」

俺はエリィを立ち上がらせ、電車から降ろした。

しかしエリィはまだ足取りがおぼつかない。

見かねた俺は肩を貸そうとエリィの隣に立った。

するとエリィは俺の肩ではなく手を掴んだ。

「…ん…歩けるよ…。」

そのままエリィは俺の手を握ったまま歩き出した。

「おぃおぃ…。」

俺は手を離して肩にしてやろうと思ったが、意外にも強く握られた手はなかなか解けず、解いたらエリィが倒れてしまいそうだった事もあり、俺はそのまま歩くことにした。

エリィが俺のこの手を握る強さが、不安で仕方がなくて行き場のない気持ちを抑え込むその気持ちの強さとだぶって感じた。