「被害届を出してもらいたいけど、出したところで、あの子の帰る場所があるわけじゃないのよね。もう高校生になって、親戚もいないあの子を助けるほうほうは、正直、何も浮かんでこないわ」





そこの言葉に、瞬も分かっていたぶん、落胆した。





助け方が全く見つからない。





「あなたが、無理する事ない。一人に集中し過ぎては、周りの安全もみえなくなるわよ」






「そうですね、お忙しいところ、ありがとうございました。失礼します」






瞬はいつも通りの笑顔で去っていくが、石川に背を向けたとき、悔しくて表情が歪んでいることを誰も気づいてはいなかった。





助けたいのに、何もできない自分がもどかしい。





瞬はせめてと、メールを私とやりとりしてくれる。






何も知らない私だけと、瞬からの連絡だけが、今の心の支えなんだ。






敵が家族じゃなかったら、きっと、私の心の闇はそんなに複雑じゃないはずなのにな。