「……そうか。
して、ご両親は何をしておられる?」

「りょ…両親はいません。」

「おらぬと?亡くなられたのか?」

「はい。」



お父さんの眉間にしわが刻まれた。
言わない方が良かったか?でも、答えないわけにもいかないし…



「それで……」

お父さんが何かを話しかけようとされた時、事もあろうに、私のお腹がぐぅぅと、大きな音を立てた。
その場の雰囲気が俄かに凍り付く。



えっ!?
普通、こういう時は笑いが起きるんじゃ…
でも、今はとても笑えるような雰囲気じゃない。
私の顔もだんだん強張って行く。



「父上……そういうことですので……」

「勝手にしろ!馬鹿者めが!」

お父さんは、あからさまに気分を害した様子で、部屋を出て行った。



「那月…本当に良いの?そんな人で…」

お母さんが、疎まし気に私を見る…



「はい、もう決めたんです。」

「……そう、わかりました。」

「では、今日はこれでお暇します。
詳しいことはまたいずれ…」

「わかったわ。」



那月さんが立ち上がったから、私も慌てて立ち上がる。



(いてて…)



足が痺れて転びそうになりながら、私は必死に那月さんの後に続いた。