(うわぁ……)



中に入ると、ここは旅館か?料亭か!?って感じの、純和風の庭が広がっていた。
池には、色鮮やかな錦鯉が泳いでる…錦鯉って高いらしいよね。
駐車場には、これまた高そうな大きな車が何台も停まっていて、母屋の玄関まではだいぶ距離がある。



「まぁ、那月坊ちゃま!」

声を掛けて来たのは、ぽっちゃりとした年配の女の人。
どうやら、イケメンさんの名前は那月さんというようだ。
って、今頃、それ!?



「あぁ、しずさん…ひさしぶりだね。
父上は、戻ってらっしゃる?」

「はい、いらっしゃいますよ。」

なんだろう?
しずさんという人には、とても穏やかな口調だ。
笑顔まで浮かべてるよ…
私に話す時とは全く違う。
やっぱり、さっきぶつかったことを根に持ってるの!?
でも、ぶつかって倒れたのは私の方で、あの人は突っ立ってた…
そんなことで根に持たれるって、おかしくない!?



「那月坊ちゃま…こちらは?」

そう言って、しずさんが私を見た。
まるで不審者を見るような…そんな目つきで…



「うん…まぁ、そのうち紹介するよ。」

那月さんは、歯切れ悪くそう言った。



「そうなんですか…」

しずさんは、なおも嫌な目つきで私をみつめた。