「……どうかしたのか?」

「い、いえ…別に。」



泣きすぎて酷い顔になってたから、夕食は部屋に運んでもらった。
テーブルに並んだ料理を黙々と口に運びながらも、私はさっきのぬいぐるみのことが頭から離れず、味さえよくわからなかった。



だって…5万円って言ったら、工場のお給料の半分近いんだから。
そんなに高いってわかってたら、絶対に買わなかったのに。
いくら生活は保障されてるとはいえ、やっぱり現金は持っておかないと心配だし、そもそもぬいぐるみに5万なんて、どう考えても贅沢しすぎだもの。
私は5000円くらいだと思って、清水の舞台から飛び降りるような気持ちで買ったのに、まさかその10倍だったなんて、それじゃあ、清水の舞台どころか、富士山のてっぺんから飛び降りるようなもんだ。
100%即死だよね。



確かに可愛いしとっても気に入ったけど…
私には分不相応だよね…
海外に来て、気が大きくなってたのかもしれないけど、本当にえらいことをしてしまったよ。
どうしよう。



そうだ…!明日、返品に行こう。
あ、でも…レシートがない。
だけど、私は日本人だし、きっと覚えてるよね…



(くまちゃんには悪いけど…仕方ないよね。
そうだ!返品したお金を那月さんに返そう!
盗まれたお金がいくらだったかはわからないけど、5万円あれば、お土産ものだっていっぱい買える!
うん、そうしよう…!)