「ところで…それはなんだ?」

「え?」

那月さんが、くまの入った袋を見てそう言った。



「あ、こ、これ…
雑貨屋さんで気に入って買ったんです。
あ、このお代は、もちろん私が払います!
ほ、ほら!可愛いでしょう!」

私はくまを袋から出して、那月さんに見せた。



「……こういうのが好きなのか?」

「え?好きっていうか…
……私、ずっと貧しくて、必要じゃないものは今までなかなか買えなかったし、住んでた家もこんな可愛いぬいぐるみを置いても似合う家じゃなかったから…
そ、それに、海外旅行なんて滅多に来ることないし、ここに来た記念に張り込んじゃおうかなって思って…」

「……そうか。」



こんな貧乏くさい話、するべきじゃなかったかな?
那月さん…なんだか複雑な顔してる。
もしかして、どん引きしてる??



(……ん?)



ふと、くまにつけられた札が目に入った。
400€
あれ?もしや、これが値段?



「那月さん、これって値札ですか?」

「あぁ、そうだ。」

「えっと、ドル…ですか?」

「いや、これはユーロだ。」



ってことは、このくまは400ユーロだったんだ。
1ユーロって何円なんだろう?
400ってことは…うーん、10円くらいかな?



「400ユーロって、円でいうといくらくらいなんですか?」

「そうだな、5万ちょっとか…」

那月さんったら、桁、間違ってるよ。



「え?5000円ですか?」

「いや、50000だ。
ハンドメイドって書いてあるが、それにしてはえらく安いな。」



(……え?)



な、な、なんですと!?
ぬいぐるみが5万超え…?
そんな馬鹿な…うちの家賃より高いぬいぐるみだなんて…



すーっと血の気が引いていくのを私は感じた。