「うっ……」



えらいことをしてしまった…そう思ったら、自然と涙がこぼれて落ちた。
那月さんの大切なお金…
いくら入ってたのかわからないけど、私に返せるだろうか?
あ…お財布自体、高いものかもしれないし、もしかしたら、大切にしてるお財布だったりしたら…



考えれば考える程、涙が出て来る…
でも、泣いててもどうにもならない。
そうだ……交番に行こう。
どうして、そんなことに気付かなかったんだろう。



でも……



その交番がどこにあるのか、わからない。
誰かに聞かなきゃ…!
私は涙を拭い、顔を上げた。



「ぽ、ぽりすまん。」



通り過ぎる人に言ってみたけど、誰も立ち止まってもくれない。
もしかしたら、ぽりすまんだけじゃ通じないのか…
交番って、なんていうんだろう?
警察官がいるところだから、ぽりすまんはうす?



「あいうぉんと…ぽりすまんはうす!」



いろんな人に声をかけてみたけど、ほぼ素通りされてしまい、私の心は完全に折れてしまった。
しかも、悪いことに私は気付いてしまったんだ。
那月さんのいる画廊の場所がわからないことに…



犯人を追いかけるのに必死で、周りの景色も全く見てなかったから、どっちから来たのか、どのくらい離れてるのか、なにもわからない。
言葉もわからない外国でひとりぼっち…
私が子供なら気にかけてくれる人もいるもしれないけど、こんなおばさんを気にしてくれる人なんていない。
そう思ったら、心細さがピークに達した。



(那月さん……)



私は町の片隅で泣きながら、不安に押しつぶされそうになっていた。