「あ、あの…」

「心配するな。すぐに終わるから。」

「え……?」

イケメンさんは私の手を握ったまま、すたすたと歩いていく。
歩幅がかなり違うから、私は必死になって小走りする。



通りに出ると、イケメンさんは手をあげ、タクシーを拾った。
私もそこに引きずりこまれ、タクシーはすべるように走り出した。
意味がよくわからない。
なんで私はタクシーに乗ってるの!?



「あ、あの…一体、どこへ…」

「さっき、話しただろう?
俺の実家だ。」

「あ…」

確かにそれはさっき聞いた。
って……そうじゃなくて、なんで実家に行くのか?が問題だ。



「あの…なんで、私があなたのご実家に?」

「両親に紹介するために決まってるだろ!」

「あ…あぁ…そ、そうですか。」

イケメンさんの剣幕に押され、私はついそんな風に答えてしまったけど…



え?どゆこと?

両親に紹介って…私を…?
なんで?さっき、ぶつかったことを根に持って…?
いや、根に持ってたら紹介なんてしないよね?
っていうか、私達、初対面だよね?
なんで、紹介するの?
なんで、私、この人と一緒にタクシーに乗ってるの?



質問は次から次に出て来るけれど、それを口にする勇気はない。
また怒らせたら怖いから、私は口をつぐんだまま、タクシーが止まるのをドキドキしながら待っていた。