「今日は疲れただろう?」

「い、いえ…」



本当はすごく疲れてた。
それは体力的なものではなく、気疲れだ。
終わったと思った途端、その疲れがどっと押し寄せて来た。



「明日は早いから、今夜は早めに寝ておいた方が良い。」

「あ、は、はい、そうします。」



明日の朝、私達はヨーロッパに向かう。
そう、新婚旅行だ。



以前、母とハワイに旅行に行こうって話になって、その時にパスポートを取った。
まだ日程も決まってないのにって笑われたけど、取っておいて良かったよ。
結局、その旅行は行けなかったんだけど。
母が病気になってしまったから。



結婚式はちゃんとやったんだし、いくらなんでも、ハネムーンまで行かなくて良いんじゃないかって思うけど、そういうわけにはいかないらしい。
やっぱり、お土産とかを買って来ないとまずいのかな?



今、私達は、ホテルのスイートルームにいる。
相変わらず、寝室は別々だ。
当然のことながら、那月さんにとって私は仮の妻であり、関心の欠片もないらしい。
それは私にとって、ありがたいことのような、ちょっと寂しいような…とても複雑な気持ちだ。