(あと少し…頑張れ!)



本当に盛大なお式だった。
まるで、芸能人の結婚式に使われそうな広い会場に、着飾った人々が集い…
私は、そこでただのひとりの知り合いもなく、とても心細い想いをした。
でも、とにかく、段取りを間違えないように、粗相をしないようにとの想いが強く、そのことに全神経を集中させてたから、心細さも式の間はほぼ忘れることが出来た。



偽物の私の両親や友達もとてもうまくやってくれた。
那月さんのご両親は、きっとこの結婚には反対だろうと思うけど、嫌な顔はしてなかった。
それなりに晴れ晴れとした顔をされてたけど、本心は違うよね…



那月さんのお兄さん夫妻にも初めて会った。
那月さんと似てらっしゃるけど、雰囲気的なものがずいぶんと違う。
お兄さんは、とても穏やかそうで優しそうな感じだ。
奥様は、ちょっと気が強そうな人に見えたけど…



当の那月さんはといえば、真っ白のタキシードを優雅に着こなして、あまりの格好良さにぼーっとしてしまう。
私がそんな人の隣にいるのが、今でも信じられないくらいだ。



そして、ついに締めの時間。
新郎の挨拶となった。
私と、那月さんは立ち上がり、那月さんがマイクを持った。



「本日はお忙しい中、私たち二人のウェディングパーティーにご列席頂きまして、誠にありがとうございました。」



私も那月さんに倣って頭を下げる。



なんだか、今でも夢を見てるみたいだ。
ちょっと前まで、ネット難民だった私が、こんな華やかな席にいるなんて…
ほっぺたをつねってみたいところだけど、そうもいかず…
私がそんなことを考えている間にも、那月さんはスピーチを続ける。
少しも澱むことなく堂々とした口調で。



「最後になりましたが、本日お集まりの皆様の、今後のご多幸とご繁栄をお祈り致しまして、私からのお礼の挨拶と代えさせて頂きます。本日は誠にありがとうございました。」

大きな拍手に包まれて、結婚式は無事に終わった。