「さぁ、これでおまえの質問にはすべて答えた。
ハンコを押してくれ。」

「で…でも…
私、那月さんのこと、何も知らないし。」

「知りたいことがあるのなら、何でも答える。
何が知りたいんだ?」

「なにがって…」



私が知ってるのは、橘那月という名前と、まだ30歳にはなってないってことだけ。
知らないことが多すぎて、何から聞いたら良いのかもわからないよ。



「おかしな奴だな。
知りたいことはないのか?」

「な、那月さん!大丈夫なんですか?
お父さんはあなたに仕事を継がせたがってるんですよね?
それに背いて、私なんかと結婚したら、生活の面倒をみてもらえなくなるんじゃないですか!?」



おぉ、素晴らしい!
なかなか良い所に気付いたよね。



「はぁ?誰が生活の面倒をみてるだと?
父上がそんな甘い人間だと思うか?」

「え?だ、だって…こんなすごいマンションに住んでられるのは、ご両親のおかげなんじゃ…」

「馬鹿を言うな。
これは、俺が自分の金で買ったものだ。」

「えっ!?」



う、嘘…
こんな都会にあるタワーマンション…そう簡単に買えるもんじゃないでしょ!?



「那月さん…どんなお仕事をされてるんですか?」

「今は特には働いていない。」



やっぱり。
そんな気がしたよ。
つまり、それはご両親に面倒みてもらってるってことだよね!?