「確か、両親はいないと言っていたな?」

「はい。」

「そうか、では親戚は?」

「いるにはいますが、ほとんど連絡は取ってません。」

「そうか…親しい友達…は、いそうにないな。」

「え?」



なんて失礼な人だろう。
私に、親しい友達がいないって決めつけるなんて…!



まぁ、確かにいないっていえばいないんだけどさ。



「でも、それでは肩身が狭いだろう。
今は便利な職業があるから、心配はいらん。
友達役と親戚役を何人か呼ぶことにしよう。」



はぁ?
一体何の話をしてるんだろう?
那月さんって、なんだか変わった人だよね。



「では…ここに必要事項を書き込んでくれ。
証人はすでに頼んである。
それと、すぐに戸籍謄本を取ってくれ。」



そういうと、那月さんは私の前に書類とボールペンを差し出した。
そこには、すでに那月さんの名前や住所が書いてあり…



(……ん?)



こ、婚姻届け!?
な、なに、これ!?



「あ、あの…那月さん…これって一体…」

「何をしている。早く書け。
どこか、わからないところでもあるのか?」

「い…いえ…そういうことじゃなくて…
な、なんで、婚姻届けを…」

「はぁ?お前、何言ってるんだ?
結婚する時は、婚姻届けを出さなければならないんだ。
そんなことも知らないのか!?」

「い…いえ…」



そうじゃないでしょ、那月さん!
私が戸惑っているのは、そんなことじゃないですってば!



なぜ、昨日会ったばかりの私とあなたが結婚するの!?ってことでしょう!!