(うわぁ……)



ドアを開けると、広い玄関。
床はつるつるした石で…もしかしたら、これって大理石ってやつ?
大きな姿見…そして、ゴージャスな花が飾ってあった。
那月さんが生けたのかな?



「お…お邪魔します。」



広い廊下…部屋もいくつもあるみたい。
那月さんの後を着いていくと、そこは居間だった。
入った瞬間、そこに掛けられた絵に私は惹きつけられた。
風景を描いたものや、抽象的なもの…人物画、様々な絵が飾られていた。



「あの…」

「腹が減ってるんだろう?
何が食べたい?」

「え?」



私は絵のことを訊ねようとした時に、那月さんがそんなことを言うから…
私はなんだか急に恥ずかしくなってしまった。



「……特にないのなら、適当に頼むが良いか?」

「は、はい。
で、でも、私…あんまりお金が…」



そうそう、よくぞ思い出した。
多分、雰囲気的におごってはもらえると思うんだけど、万一ってことがある。
そこははっきり言っとかないと、困ったことになるかもしれないからね。



那月さんはそのことについては何も言わず、どこかに電話をかけた。



「二人分の夕食を頼む。」



そんなざっくりした言い方で大丈夫なの??って心配はあったけど…
まぁ、きっと良く知ったお店なんだろう。
あぁ、やっと何か食べられる…
そう思ったら、またお腹の虫が鳴いた。