「……何をしている?」



数メートル先を歩いていた那月さんが振り返り、険しい顔をしていた。



「え…えっと…会っていきなりっていうのはちょっと…
わ、私…割と古風っていうか、なんというか…」

「は?」



那月さんは、すたすたと私の傍に来て、私の手首を掴んで歩き出す。



「え…だ、だめですって!
そんな…会っていきなりホテルだなんて…
私、そんな軽い女じゃ…」

「……おまえ、さっきから何を言ってるんだ?」

「な、なにって…ここはホテルですよね?」

「ここはマンションだけど…」

「え?だって、あそこにフロントが…」

「あれはフロントじゃなくて、コ・ン・シェ・ル・ジュ!」



(コンシェルジュ…?
確か、どこかで聞いたことがあるような…なんだっけ??)



「さ、早く行くぞ!」

「え…?」



ホテルっていうのは、どうやら私の勘違いだったみたい。
そっか、マンションだったんだ。
ってことは、やっぱり那月さんの家なんだ。



(なぁ~んだ………ん??)



って、家でもホテルでも同じじゃない!?
私…那月さんの家に連れ込まれてる?



(た、大変だ!?)



だけど、その時には、すでに私達はエレベーターに乗り込んでいた。



万事休す!一体、ど、どうすれば!?