(うわぁ……)



私は、また馬鹿みたいな顔をして、空を仰いでいた。



タクシーが停まったのは、◆◆◆のタワーマンション。
一体、何階まであるんだろう?
見上げてそれを数えてたら、那月さんの声がした。



「何をしている?
さぁ、行くぞ。」

「は、はいっ!」



そう返事はしたものの、どこ行くの?
って、ここで停まったんだから、このタワーマンションに行くのよね?
もしかして、那月さんのお家?
うん、それはありえる。
『実家』があんなに立派だったんだから、このくらいすごいマンションに住んでても、何の不思議もない。



(わぁ…)



なるほど、これがオートロックってやつなのか。
私はカートを引っ張り、締め出されないように慌てて那月さんの後を追った。



(うわぁ…)



これがマンション?
なんだかホテルのロビーみたい…



「橘様、お帰りなさいませ。」



フロントみたいなところにいた男性が、那月さんに声を掛けた。
那月さんはほんの少しだけ頭を下げて、通り過ぎていく。
やっぱり、ホテルだ!
ここって、マンションじゃなくてホテルなんじゃないかな?
那月さんくらいの人なら、ホテル暮らしっていうのも十分あり得る…



(……ん?)



そんなことを考えてたら、急に私の足が停まった。



え?
ホテル…?



も、も、もしかして…
私…那月さんにホテルに連れ込まれたの…!?



(えーーーっ!?)



びっくりして、私はますますその場から動けなくなってしまった。