「では……」

「ここで待ってるから、早くしろよ!」

「え?」

「さぁ、早く行って来い!」

「は、はいっ!」



なんでだろう?
ここで私を降ろしてお別れだと思ってたのに、待ってるっていうのはどゆこと…?
なんでか知らないけど、ご両親にはお会いしたし、もう私に用事はないはずだけど…



(急がなくちゃ!)



なんでかはわからないけれど、ぐずぐずしてたら那月さんが苛々するであろうことは予想がつくから、私はロッカーから荷物を取り出し、慌てて那月さんの元へ戻った。



「なんだ?その格好。」

何って…そりゃあ、確かに昭和の泥棒みたいかもしれないけど、風呂敷って、袋よりたくさん入るんだから!



「あ、あの…」

「早く乗って。」

「はいっ!」



言い訳をする暇もないままに、私はまたタクシーに乗り込む。
やっぱり、那月さんはまだ私に何か用があるみたいだ。
でも、一体何が?



その時、また私のお腹が鳴った。
那月さんが私をじろりとにらむ…



「……ずいぶんと腹が減ってるようだな。」

「は、はは…そ、そうかも…」

恥ずかしさを笑って誤魔化す。
考えてみればこの数日、ろくなものを食べてない。
なんたってお金がないから、お腹の膨れそうなスナック菓子とカップ麺ひとつで一日しのいでたから。
そりゃあ、お腹の虫も鳴きたくなるってもんよね。



「荷物…えらく多いんだな。
トランクに入れれば良かったのに。」

「あ…そ、そうですね。すみません。」

そんなことは乗る前に言って下さいよって。
カートと風呂敷包みのせいで確かにちょっと場所は取ってるけど、大きな車だからそれほど窮屈ってこともないのに…