那月さんがお屋敷を出ると、門の前にはタクシーが停まってた。



「坊ちゃま、どうぞ。」

「しずさん、ありがとう。」

那月さんは、タクシーに乗り込んだ。



えっと…私はどうすれば良いんだろう?
っていうか、駅前のコインロッカーに荷物を預けてあるし、戻らなきゃ困るんだけど…



「何をしている?早く乗れ。」

「あ…は、はい。」



良かった…
そうだよ…とりあえず、元の場所までは送ってもらわないと…
なんたって、私にはお金がないんだから…

私はそそくさとタクシーに乗り込んだ。



「〇〇〇まで頼む。」



え?違う…
私が、荷物を置いてるのは◆◆◆なのに…



「あ、あの…私…◆◆◆の駅前に荷物置いてるんですけど…」

「……明日で良いだろ。」

那月さんは私の方を見ることなく、そう言った。



「え…っと…私…あれがないと困るし…」

おずおずとそう言うと、小さな舌打ちが聞こえた。



「先に、◆◆◆の駅前に寄って下さい。」

不快そうな声だったけど…
那月さんのその言葉に、私はとりあえずほっとして、胸を撫でおろした。