「……なにそれ」



永人に見つめられてることが恥ずかしくなって、顔をそむける。



「つーか、お前だって俺と話せてんじゃん」


「……慣れた」


「俺と明日汰だけでも、大丈夫なやつ作れてよかったよ」



ポンポンっと頭を撫でる。



「え?」


「女の力じゃどうにもなんねぇことだってあるだろ?」


「……うん」



脳裏には昨日の木下くん。
ああいうこと、これからもないとは限らない。
でも、あたしはあんな場面で声すら出すことができなくなるんだ。



「そういうときに、俺の存在思い出せ」


「うん」


「声、出ねぇだろうけどなんでもいい電話してくれれば俺が探しに行く」


「……ありがとう」



今までは女子校だったからそんなに危ない目にあうことなんてなかった。
だから、危機感なんて持ったことなかったんだ。



「お前、結構可愛い顔してんだからさ」


「え?」


「隙、つくるなよ」



心配そうな永人の顔に、あの日隣の席になったのが永人でよかったと心から思う。