「……永人」



やっぱり、諦めるなんてそんなの無理。
でも、話せなくなるなんてもっと嫌だ。



「千花のことはいままで通り大事には思ってる」


「うん……」



あたしの事を〝大事〟だという永人。
それだけで十分幸せなのかもしれない。

好きな人が自分のことを大事に思ってくれてる。
たとえ、交わることのない想いではあるけど。
想いの違いはあるけれど、たしかな想いがそこにはある。



「今日〝千花の部屋には行かない〟とか言ってごめんな」


「ううん。あたしが告白なんてするからだよ……あたしが悪いの」



あそこでなんで言ってしまったんだろうとずっと後悔してる。

でも、言ってしまったものはもう取り消せないから。



「千花は悪くねぇよ。ごめんな」



そう言い終わった永人とあたしの視線が重なる。



──グイッ



あっという間だった。
永人と距離が詰まったと思ったら、次の瞬間には永人の腕の中にいた。