「おじゃまします!」


「どーぞ、どーぞ」



一緒に帰ってきたあたしも日奈子。

明日汰は1回帰ってからくるってことで、いまは日奈子とあたしだけ。



「ねぇ、千花」



床にちょこんと座ってまもなく、日奈子が口を開く。



「ん?」


「大丈夫?」


「なにが?」



何のことを言われてるかなんてわかってた。
でも、気づかないふりをしたかった。



「永人、あれはひどいよ……」


「仕方ないよ。自分のこと好きな子の部屋なんて行きたくないのわかるし」


「なんであんな不器用なのかな」


「え?」



最後の言葉がよくききとれなくて、首を傾げる。



「なんでもない!さっ、明日汰が車で千花先生を独り占めだぞー」



すぐに笑顔に切り替わった日奈子は、カバンから勉強道具を取りだす。



「問題やって、わからないとこあった言ってね」



あたしも自分のカバンから勉強道具を取り出して、テーブルに置く。