お母さんが部屋を出てから30分。
颯斗はまだ目を覚まさなかった。
良い夢を見てるのか、その寝顔は少し笑顔だった。
「なんか落ち着くな」
好きな人の寝顔を見てるだけでこんなに落ち着くなんて、知らなかったな。
「ん……」
颯斗が不意に声をもらした。
もしかして、目覚ましちゃった?
「あれ……誰かいるのか?」
颯斗が寝ぼけ眼で、私を見る。
「颯斗?おはよう」
「……」
私の挨拶に、颯斗は何も返さなかった。
最悪なことが脳裏を過ぎる。
「は、颯斗?どうかした?」
私は震える声で颯斗に言った。
嫌だ。
忘れてるなんて、嫌だ。
「誰、ですか?」