その日の放課後。
いつも通り、私たちはグラウンドで練習していた。
そう、いつも通り。
「キャー!颯斗くーん!」
「こっち向いてー!」
この声は女子の声。
もっと詳しく言えば、颯斗のファンの声。
颯斗はとてもモテて、中学の頃から何人もの女の子に告白されている。
今ではファンクラブまである始末。
「モテモテだなぁ。颯斗は」
「お前は桃花ちゃんがいるだろ」
颯斗が春馬の頭を小突いて、女子の声援はさらに大きくなる。
気持ちは分かるけど、練習の邪魔になるから退いて欲しい。
「優杏、タオル持ってきて!」
「あ、うん!」
私が颯斗にタオルを持って行くと、ファンの集団のあちこちから私を非難する声が聞こえてくる。
そんなに私を睨むなら、あの子たちもマネージャーやればいいのに。
って前に言ったことがあったけど、みんなが口を揃えて言ったのは「マネージャーになんてなったら仕事しなくちゃいけないじゃん。そんなの面倒臭いし」ということ。
結局は颯斗を見て騒ぎたいだけ。傍で支えたいなんて人は誰もいない。