水中トンネルに着くと、あまりの綺麗さに心を奪われた。















見たこともない珍しい魚や、サメのように大きな魚が泳いでいたりした。


















「綺麗だね!」
















今度は一人ではしゃがないように、颯斗に声を掛けながらその景色を楽しんでいた。















「ああ」














でも、颯斗はじっと魚を見たまま、適当な返事をしていた。














「どうしたの?」


















何だか心配になって声を掛けた。
















もしかしたら、これも病気の症状なのかな。
















「魚って凄いよな」













「え?」















颯斗の言葉に、首を傾げた。

























颯斗って魚好きだったっけ?






















「あいつらは、足がなくても生きていけるじゃん?
















今まで意識したことなかったけど、この病気になって、初めて分かったんだ。











魚がとても強いこと水の中で、どこまでも泳いで遠くの国に行って、それでも泳ぐことをやめなくて。羨ましいんだ。










自由自在にどこまでも行けて」














「颯斗……」











魚を見ながら言う颯斗の瞳が少し悲しく見えた。













いつも平気そうなフリをして私たちの前にいるけど、本当は怖くて仕方がないのかもしれない。















病気が進行することが。


















「俺、旅行したことないからさ。



















だから、一度遠くに行ってみたい。
















世界遺産とか、見てみたい」




















「私が連れて行く!

















颯斗の病気が治ったら私がどこへでも連れて行く!



















病気が治らなくても、私がこの車椅子を押して、颯斗の足になる!」





















言ってから気づいてしまった。






















これではまるで、告白しているみたいだ。























恥ずかしくなって、顔を隠していると笑い声が聞こえてきた。
























「うん。よろしく、優杏」


























震える右手で、蹲る私の頭を颯斗が撫でた。
























それだけで、恥ずかしさなんて忘れてとても嬉しくなる。
























やっぱり私って単純だ。